トマオデ 性的描写有
畳んどきます
#トマオデ
夜、トマーシュの部屋。
夏の空気がぬるくて、窓から風がゆるく入ってくる。
ベッドの上、寄り添うふたり。オデロは上着を脱いでシャツ一枚。
トマーシュはその肩にそっと手を添える。
「……暑いのに、くっつくなよ……」
オデロが小さく文句を言っても、トマーシュは穏やかに笑う。
「暑いなら、脱げばいい」
「……なっ、バカかおまえ……!」
顔を赤くして怒ったふりをするオデロに、トマーシュは静かに顔を近づける。
「……怒ってないくせに」
「っ……!」
唇が触れそうな距離。
オデロは目をそらそうとするけど、逃げる気配はなくて。
「僕は……君がまんざらでもないの、ちゃんとわかってるよ」
「……うるせぇ、そういうの、言うなよ……」
「じゃあ、黙って……感じて」
そして、トマーシュはそっとキスを落とす。
オデロは目を伏せたまま、小さく息を呑んで――でも、拒まない。
指先が髪を梳き、耳のうしろにキスが落ちるたび、オデロの体がぴくんと揺れる。
彼の首筋をなぞる唇に、細い声で「……トマーシュ……」と呼ぶ声がこぼれて。
僕の胸元で、オデロは小さくうめいて動きを止めた。
不機嫌そうに眉を寄せて、でも、逃げようとしない。
「……ちょっとやりすぎじゃない?」
「ごめん。君がかわいくて、つい」
わざとらしく謝ると、オデロは僕をにらんできた。
でも、その顔は赤く染まっていて、まるで火照った体を隠すみたいに、シーツの端をぎゅっと握っている。
「おまえ……そういう顔で言うのずるいんだよ」
「どんな顔?」
僕は笑いながら、そっとその手を取る。
指先に唇を落とすと、オデロの肩がびくんと揺れた。
「……チクショウ、だから嫌いなんだよ、そういうとこ」
嫌い、なんて言葉を口にしながら、オデロは僕のほうに身体を寄せてきた。
まるで、もっと触れてくれって言っているみたいに。
「ほんとは嫌いじゃないくせに」
「……ちがう、けど」
その曖昧な返事が、何よりの肯定だって僕は知ってる。
「……僕のこと、少しでも好きだって思ってくれるなら、それだけで嬉しいよ」
「なに、それ……ずりぃな……」
オデロはふてくされたように顔を伏せたけど、その耳は熱く染まっていた。
僕はそっと、彼の頬を撫でる。
「ちゃんと言ってくれたら、もっと君を大事にできるのに」
「……うるせぇ」
オデロは枕に顔を押しつけて、ごろりと背を向けた。
でも、僕の腕を引き寄せて離さない。
そのぬくもりが、何よりも優しい返事だった。
オデロは、頬を少し赤くして視線を逸らす。
けれど、僕の胸に額を預けたまま動こうとしない。
「……もう、やだ。なんでそんな、優しい顔すんだよ」
拗ねたような声。
でもその声には、ほんの少し震えがあった。
僕は彼の髪をそっと撫でる。
指の腹が触れるたび、オデロの呼吸が微かに揺れるのがわかる。
「やめてほしいなら、言ってくれていいんだよ」
「やだって言ったら、やめんのかよ?」
僕は小さく笑う。
「もちろん。でも、君が“してほしい”って言ってくれたら、何度でも抱くよ」
オデロがふっと息を呑んだ。
指先が、僕のシャツの裾をきゅっと掴む。
胸元に擦り寄ってくるように顔を上げて──その目は、わずかに潤んでいた。
「……じゃあ、さ」
声はかすれて、かすかに甘えるように揺れる。
「……もう一回、抱いて。なぁ、トマーシュ」
ああ──だめだ。
こんな風に頼まれたら、君が何を望んでも叶えてしまう。
僕は彼の頬にキスを落とし、そっと囁く。
「……うん。オデロ。君がそう言うなら、朝までだって付き合うよ」
ベッドが軋む。オデロが僕の名前を呼ぶたびに、胸が熱くなる。
拒まれてもかまわないと思っていたはずなのに──今は、ただ君が欲しい。
そのぬくもりが、僕のすべてを溶かしていく。
僕の指先がそっと彼の頬をなぞると、オデロは瞳を揺らしながらも、どこか悔しそうに僕を睨んだ。
「……なぁ、はやく……」
「なにを?」
僕はわざと分からないふりをして訊き返す。
「……っ……もう……」
身体の奥から押し出すような声と、赤くなった顔。そのどちらもが僕をたまらなくさせた。
「君はずいぶん、欲しがりなんだね」
オデロは顔を逸らす。けれど逃げられないことは、彼自身も分かっている。
「ねえ、ちゃんと言ってごらん」
「……っ、やだ……」
「じゃあ、しないよ?」
指を離すふりをすると、彼は慌てて僕の手首を掴んだ。
「……! や……やだ、やだ……やめんなよ、そういうの……っ」
「だったら?」
「……たのむから……して……トマーシュ……っ、お願い……っ」
その声に、僕は笑みを深くした。
「うん。よく言えたね」
唇を重ねながら、今度は焦らしなんてしない。彼の「お願い」が僕の耳の奥に焼きついて、僕ももう我慢できなくなっていたから。
オデロの指先がシャツの裾をつかんでいる。声はもうすっかり甘えていて、目元なんか、ちょっと潤んでさえいた。
「……なぁ、トマーシュ……もう、やだよ、からかうの……っ、ちゃんと……してくれよ」
ぼくの膝の上に座り込んで、身をよじりながら、なんとか誘惑しようとしてる。
でも――その顔が、あまりに真剣で、必死で、ぼくはふと、意地悪な気持ちになる。
「ふふ、ねえオデロ。君、さっきから“ちゃんと”って言うけど――どうしてほしいのか、ちゃんと説明して?」
「……っ!」
ぼくの首に手を回したまま、オデロの顔が赤くなる。
言葉にしろって言われたら弱いんだ。そんなこと、知ってるくせに――って顔をして、じっと睨んでくるのがかわいくてたまらない。
「……トマーシュの、指……とか、舌とか……そういうので……もっと、気持ちよく、してほしい……から……っ」
ぼそぼそと、それでも精一杯言ったその声が、ぼくの腹の底に火をつける。
「ふーん、なるほど」
わざとらしく笑って、オデロの顎に指をかける。震えてる唇にキスを落としながら、さらに焦らすようにささやく。
「じゃあ、“気持ちよくしてください、トマーシュさん”っておねだりして?」
「~~~~っ! なっ、なんで“さん”付け……!」
「だって、お願いする時は丁寧にしないと、ね?」
うそぶきながら、胸元に手を這わせる。オデロの体が小さく震える。
それでも彼は、歯をくいしばって、必死に言葉を繋いだ。
「……き、気持ちよく、してください……トマーシュさん……っ、もう……変なことばっか言わせんなよ……!」
ぼくは笑いながら、そっと耳元で囁いた。
「よく言えました。……じゃあ、甘やかしてあげるね、オデロ」
彼の体をそっと抱え込むと、オデロはほっとしたようにぼくの肩に額を預けた。
まるで猫みたいに撫でてほしそうな顔で、すり寄ってくる。
――ああ、ほんとに。
意地悪したくなるくらい、かわいいやつ。
オデロの声が、擦れたように揺れている。
何度も甘い声を漏らしながら、熱っぽくぼくの名前を呼んで、喉を鳴らして、もう限界って顔をしているのに――
「……トマーシュ……もう、……もうだめ、だって……っ」
「だめ? どこが?」
ぼくはとぼけた声で囁いて、指先をやさしく這わせる。わざと、逃がすように、焦らすように。
期待した場所には触れずに、キスだけを重ねる。何度も、唇の端に、首筋に、鎖骨に――やさしく、けれど執拗に。
「や、……っ、そこばっかじゃ、やだよぉ……っ」
「ふふ、かわいい。そんな顔して、ぼくにしか見せられないくせに」
オデロの手が、ぼくのシャツをきゅっと握る。
必死にしがみついて、泣きそうな顔で懇願してくるその姿が、あまりにも、いとおしい。
「ねえ、オデロ。こんなに乱れて……誰に見せてるの?」
「……っ、おまえ、しかいねぇだろ……!」
「そうだよね」
そう言いながら、ぼくはまたキスを落とす。頬に、耳に、まぶたに。
でもその手は、まだ本当には与えない。
焦らすほどにオデロは身をよじり、懇願の声が切実になっていく。
「なぁ……お願い、もう、して……っ、さっき甘やかしてくれるって、言ったじゃねぇかよ……!」
そのとき。
ぼくの中で、なにかが決壊した。
――かわいすぎる。
こんな姿、こんな声、こんな顔、ぼく以外の誰にも見せたくない。
今すぐ、ぼくのものにしたい。深いところまで、ぜんぶ僕の印を残して、逃げられないようにしたい――
「……オデロ、」
ぼくはそっと彼の耳元で囁く。
「ごめん。やっぱり、もうちょっとだけ焦らしてたい。……君が、ぼくに夢中になるまで」
「~~っ、トマーシュ……っ!」
そう言いながら、今度こそ本気のキスを落とす。舌を絡め、声を吸い取って、息すら奪うような口づけ。
オデロの体温がぼくに移ってくる。鼓動の速さが重なっていく。
――逃がさない。
君はもう、ぼくだけのものだ。
オデロの息は乱れきっていた。
目尻はうっすら潤んでいて、頬は火照り、喉は何度も鳴っている。
なのに、トマーシュはまだ――
「ねぇ、オデロ。今どんな気持ち?」
耳元でそう囁くと、オデロは涙のにじむ瞳で睨み上げてくる。
「……っ、ひどい。……いじわる、ばっかして……っ」
「うん。ごめん。けど――君がかわいすぎるから、手放したくなかった」
唇が触れる寸前で止める。
その動作ひとつで、オデロの背がびくんと跳ねた。
「……ぁ、……おねがい……も、もう……」
「……やっと言ってくれたね」
囁いた瞬間、トマーシュの優しい手つきが、豹変する。
ゆっくりと、だけど深く。
オデロの熱を包み込むように、そしてその奥の奥へと、確かに届くように――
「っ……う、ぁ……! っ、トマーシュっ……!」
体がびくん、と揺れた。
与えられた快楽に、オデロの背が反る。
何度も声を押し殺すように噛み締めていた唇が、とうとう鳴き声を溢れさせた。
「もう……っ、ずっと、我慢してたのに……っ」
「知ってた。全部見てたよ、オデロのえっちな顔も、がんばってる声も、可愛いおねだりも」
耳のすぐ裏で囁くように、愛を注ぎながら、トマーシュは自分の中の欲を一滴も残さず注ぎ込んでいく。
オデロの身体が、それを受け止めるたびに甘い声をあげて、トマーシュの名を呼んで――
「っ、……好きじゃない……からな……っ」
「うん、わかってるよ。……でも、君の体はちゃんと答えてくれてる」
「うる、さい……」
だけど、オデロの腕はトマーシュの背にしがみつき、もう離さないとばかりに、爪を立ててきた。
何度も、何度も、溺れるように抱きしめて、口づけて、確かめあって、
ついに限界まで達した瞬間――
「……っ、トマーシュ……っ、すき……じゃない、けど……すき……っ」
トマーシュの胸の奥がきゅうっと締めつけられた。
「ぼくも。君じゃなきゃ、だめなんだ」
そのまま二人は、ほどけた体を寄せ合って、深い夜の中で重なりあったまま、静かに呼吸を整えていった。
朝――
カーテンの隙間から差し込む陽光が、オデロの頬に柔らかく触れた。
「……う……ん……」
まぶたを閉じたまま、寝ぼけたように呻きながら身じろぐと、すぐ横から温もりが伝わってくる。
反射的に跳ねるように目を見開いて、飛び起きた。
「~~~~っ!? お、おい! なんでっ……!」
隣には、昨夜の張本人――トマーシュ。
上半身裸で、静かな寝息を立てている。
その顔はあまりにも穏やかで、無防備で、普段のクールさとは打って変わった無邪気さすら漂っていて。
「~~っ、なんでこんな顔して寝てんだよ、バカ……っ」
顔を真っ赤にしながらも、オデロはしばらく見つめてしまう。
でも、ふと我に返って、ハッと視線を逸らした。
「お、俺は別に……す、好きで……されたわけじゃ、ねぇし……っ!」
しかし、視線はまたトマーシュの寝顔へと戻る。
なんだか、心の奥がきゅっと締めつけられるような、だけどあったかい。
「……ちょっとは、気にしろよな。……責任とか……とれよな」
そうつぶやいたとき。
「……うん、ちゃんと取るよ。ぜんぶ、ぼくの責任だ」
「うわっ!? お、起きてたのかよっ!」
「ん……オデロがかわいすぎて、眠っていられなかった」
「なっ……! バ、バカかっ!? そういうこと、平気で言うな!! おまえは……おまえはさ……!」
バッと布団をかぶって顔を隠すオデロ。
でも、布団の中から聞こえる声は、震えていた。
「……きのうのこと……ほんとに、忘れたりしねぇよな?」
「忘れるわけないだろ。何回も、確かめ合ったじゃないか。……君のこと、もう絶対に離さないよ」
そっと布団の隙間から手を差し込んで、オデロの手を握る。
オデロはしばらく無言だったが、ぎゅっと握り返してくる。
「……うるせぇ。ほんと、調子狂う……」
トマーシュは微笑みながら、そっとオデロの額にキスを落とした。
「調子、狂わせてばっかでごめんね。……でも、君のこと、もっともっと狂わせたい」
「~~~~~~~っ!!! うるせぇって言ってんだろっ!!! バカ!!!」
オデロの拳がトマーシュの胸をぽかぽか叩く。
でも、痛くない。
むしろ――あまりにもやわらかくて、あたたかくて、甘い朝だった。畳む
畳んどきます
#トマオデ
夜、トマーシュの部屋。
夏の空気がぬるくて、窓から風がゆるく入ってくる。
ベッドの上、寄り添うふたり。オデロは上着を脱いでシャツ一枚。
トマーシュはその肩にそっと手を添える。
「……暑いのに、くっつくなよ……」
オデロが小さく文句を言っても、トマーシュは穏やかに笑う。
「暑いなら、脱げばいい」
「……なっ、バカかおまえ……!」
顔を赤くして怒ったふりをするオデロに、トマーシュは静かに顔を近づける。
「……怒ってないくせに」
「っ……!」
唇が触れそうな距離。
オデロは目をそらそうとするけど、逃げる気配はなくて。
「僕は……君がまんざらでもないの、ちゃんとわかってるよ」
「……うるせぇ、そういうの、言うなよ……」
「じゃあ、黙って……感じて」
そして、トマーシュはそっとキスを落とす。
オデロは目を伏せたまま、小さく息を呑んで――でも、拒まない。
指先が髪を梳き、耳のうしろにキスが落ちるたび、オデロの体がぴくんと揺れる。
彼の首筋をなぞる唇に、細い声で「……トマーシュ……」と呼ぶ声がこぼれて。
僕の胸元で、オデロは小さくうめいて動きを止めた。
不機嫌そうに眉を寄せて、でも、逃げようとしない。
「……ちょっとやりすぎじゃない?」
「ごめん。君がかわいくて、つい」
わざとらしく謝ると、オデロは僕をにらんできた。
でも、その顔は赤く染まっていて、まるで火照った体を隠すみたいに、シーツの端をぎゅっと握っている。
「おまえ……そういう顔で言うのずるいんだよ」
「どんな顔?」
僕は笑いながら、そっとその手を取る。
指先に唇を落とすと、オデロの肩がびくんと揺れた。
「……チクショウ、だから嫌いなんだよ、そういうとこ」
嫌い、なんて言葉を口にしながら、オデロは僕のほうに身体を寄せてきた。
まるで、もっと触れてくれって言っているみたいに。
「ほんとは嫌いじゃないくせに」
「……ちがう、けど」
その曖昧な返事が、何よりの肯定だって僕は知ってる。
「……僕のこと、少しでも好きだって思ってくれるなら、それだけで嬉しいよ」
「なに、それ……ずりぃな……」
オデロはふてくされたように顔を伏せたけど、その耳は熱く染まっていた。
僕はそっと、彼の頬を撫でる。
「ちゃんと言ってくれたら、もっと君を大事にできるのに」
「……うるせぇ」
オデロは枕に顔を押しつけて、ごろりと背を向けた。
でも、僕の腕を引き寄せて離さない。
そのぬくもりが、何よりも優しい返事だった。
オデロは、頬を少し赤くして視線を逸らす。
けれど、僕の胸に額を預けたまま動こうとしない。
「……もう、やだ。なんでそんな、優しい顔すんだよ」
拗ねたような声。
でもその声には、ほんの少し震えがあった。
僕は彼の髪をそっと撫でる。
指の腹が触れるたび、オデロの呼吸が微かに揺れるのがわかる。
「やめてほしいなら、言ってくれていいんだよ」
「やだって言ったら、やめんのかよ?」
僕は小さく笑う。
「もちろん。でも、君が“してほしい”って言ってくれたら、何度でも抱くよ」
オデロがふっと息を呑んだ。
指先が、僕のシャツの裾をきゅっと掴む。
胸元に擦り寄ってくるように顔を上げて──その目は、わずかに潤んでいた。
「……じゃあ、さ」
声はかすれて、かすかに甘えるように揺れる。
「……もう一回、抱いて。なぁ、トマーシュ」
ああ──だめだ。
こんな風に頼まれたら、君が何を望んでも叶えてしまう。
僕は彼の頬にキスを落とし、そっと囁く。
「……うん。オデロ。君がそう言うなら、朝までだって付き合うよ」
ベッドが軋む。オデロが僕の名前を呼ぶたびに、胸が熱くなる。
拒まれてもかまわないと思っていたはずなのに──今は、ただ君が欲しい。
そのぬくもりが、僕のすべてを溶かしていく。
僕の指先がそっと彼の頬をなぞると、オデロは瞳を揺らしながらも、どこか悔しそうに僕を睨んだ。
「……なぁ、はやく……」
「なにを?」
僕はわざと分からないふりをして訊き返す。
「……っ……もう……」
身体の奥から押し出すような声と、赤くなった顔。そのどちらもが僕をたまらなくさせた。
「君はずいぶん、欲しがりなんだね」
オデロは顔を逸らす。けれど逃げられないことは、彼自身も分かっている。
「ねえ、ちゃんと言ってごらん」
「……っ、やだ……」
「じゃあ、しないよ?」
指を離すふりをすると、彼は慌てて僕の手首を掴んだ。
「……! や……やだ、やだ……やめんなよ、そういうの……っ」
「だったら?」
「……たのむから……して……トマーシュ……っ、お願い……っ」
その声に、僕は笑みを深くした。
「うん。よく言えたね」
唇を重ねながら、今度は焦らしなんてしない。彼の「お願い」が僕の耳の奥に焼きついて、僕ももう我慢できなくなっていたから。
オデロの指先がシャツの裾をつかんでいる。声はもうすっかり甘えていて、目元なんか、ちょっと潤んでさえいた。
「……なぁ、トマーシュ……もう、やだよ、からかうの……っ、ちゃんと……してくれよ」
ぼくの膝の上に座り込んで、身をよじりながら、なんとか誘惑しようとしてる。
でも――その顔が、あまりに真剣で、必死で、ぼくはふと、意地悪な気持ちになる。
「ふふ、ねえオデロ。君、さっきから“ちゃんと”って言うけど――どうしてほしいのか、ちゃんと説明して?」
「……っ!」
ぼくの首に手を回したまま、オデロの顔が赤くなる。
言葉にしろって言われたら弱いんだ。そんなこと、知ってるくせに――って顔をして、じっと睨んでくるのがかわいくてたまらない。
「……トマーシュの、指……とか、舌とか……そういうので……もっと、気持ちよく、してほしい……から……っ」
ぼそぼそと、それでも精一杯言ったその声が、ぼくの腹の底に火をつける。
「ふーん、なるほど」
わざとらしく笑って、オデロの顎に指をかける。震えてる唇にキスを落としながら、さらに焦らすようにささやく。
「じゃあ、“気持ちよくしてください、トマーシュさん”っておねだりして?」
「~~~~っ! なっ、なんで“さん”付け……!」
「だって、お願いする時は丁寧にしないと、ね?」
うそぶきながら、胸元に手を這わせる。オデロの体が小さく震える。
それでも彼は、歯をくいしばって、必死に言葉を繋いだ。
「……き、気持ちよく、してください……トマーシュさん……っ、もう……変なことばっか言わせんなよ……!」
ぼくは笑いながら、そっと耳元で囁いた。
「よく言えました。……じゃあ、甘やかしてあげるね、オデロ」
彼の体をそっと抱え込むと、オデロはほっとしたようにぼくの肩に額を預けた。
まるで猫みたいに撫でてほしそうな顔で、すり寄ってくる。
――ああ、ほんとに。
意地悪したくなるくらい、かわいいやつ。
オデロの声が、擦れたように揺れている。
何度も甘い声を漏らしながら、熱っぽくぼくの名前を呼んで、喉を鳴らして、もう限界って顔をしているのに――
「……トマーシュ……もう、……もうだめ、だって……っ」
「だめ? どこが?」
ぼくはとぼけた声で囁いて、指先をやさしく這わせる。わざと、逃がすように、焦らすように。
期待した場所には触れずに、キスだけを重ねる。何度も、唇の端に、首筋に、鎖骨に――やさしく、けれど執拗に。
「や、……っ、そこばっかじゃ、やだよぉ……っ」
「ふふ、かわいい。そんな顔して、ぼくにしか見せられないくせに」
オデロの手が、ぼくのシャツをきゅっと握る。
必死にしがみついて、泣きそうな顔で懇願してくるその姿が、あまりにも、いとおしい。
「ねえ、オデロ。こんなに乱れて……誰に見せてるの?」
「……っ、おまえ、しかいねぇだろ……!」
「そうだよね」
そう言いながら、ぼくはまたキスを落とす。頬に、耳に、まぶたに。
でもその手は、まだ本当には与えない。
焦らすほどにオデロは身をよじり、懇願の声が切実になっていく。
「なぁ……お願い、もう、して……っ、さっき甘やかしてくれるって、言ったじゃねぇかよ……!」
そのとき。
ぼくの中で、なにかが決壊した。
――かわいすぎる。
こんな姿、こんな声、こんな顔、ぼく以外の誰にも見せたくない。
今すぐ、ぼくのものにしたい。深いところまで、ぜんぶ僕の印を残して、逃げられないようにしたい――
「……オデロ、」
ぼくはそっと彼の耳元で囁く。
「ごめん。やっぱり、もうちょっとだけ焦らしてたい。……君が、ぼくに夢中になるまで」
「~~っ、トマーシュ……っ!」
そう言いながら、今度こそ本気のキスを落とす。舌を絡め、声を吸い取って、息すら奪うような口づけ。
オデロの体温がぼくに移ってくる。鼓動の速さが重なっていく。
――逃がさない。
君はもう、ぼくだけのものだ。
オデロの息は乱れきっていた。
目尻はうっすら潤んでいて、頬は火照り、喉は何度も鳴っている。
なのに、トマーシュはまだ――
「ねぇ、オデロ。今どんな気持ち?」
耳元でそう囁くと、オデロは涙のにじむ瞳で睨み上げてくる。
「……っ、ひどい。……いじわる、ばっかして……っ」
「うん。ごめん。けど――君がかわいすぎるから、手放したくなかった」
唇が触れる寸前で止める。
その動作ひとつで、オデロの背がびくんと跳ねた。
「……ぁ、……おねがい……も、もう……」
「……やっと言ってくれたね」
囁いた瞬間、トマーシュの優しい手つきが、豹変する。
ゆっくりと、だけど深く。
オデロの熱を包み込むように、そしてその奥の奥へと、確かに届くように――
「っ……う、ぁ……! っ、トマーシュっ……!」
体がびくん、と揺れた。
与えられた快楽に、オデロの背が反る。
何度も声を押し殺すように噛み締めていた唇が、とうとう鳴き声を溢れさせた。
「もう……っ、ずっと、我慢してたのに……っ」
「知ってた。全部見てたよ、オデロのえっちな顔も、がんばってる声も、可愛いおねだりも」
耳のすぐ裏で囁くように、愛を注ぎながら、トマーシュは自分の中の欲を一滴も残さず注ぎ込んでいく。
オデロの身体が、それを受け止めるたびに甘い声をあげて、トマーシュの名を呼んで――
「っ、……好きじゃない……からな……っ」
「うん、わかってるよ。……でも、君の体はちゃんと答えてくれてる」
「うる、さい……」
だけど、オデロの腕はトマーシュの背にしがみつき、もう離さないとばかりに、爪を立ててきた。
何度も、何度も、溺れるように抱きしめて、口づけて、確かめあって、
ついに限界まで達した瞬間――
「……っ、トマーシュ……っ、すき……じゃない、けど……すき……っ」
トマーシュの胸の奥がきゅうっと締めつけられた。
「ぼくも。君じゃなきゃ、だめなんだ」
そのまま二人は、ほどけた体を寄せ合って、深い夜の中で重なりあったまま、静かに呼吸を整えていった。
朝――
カーテンの隙間から差し込む陽光が、オデロの頬に柔らかく触れた。
「……う……ん……」
まぶたを閉じたまま、寝ぼけたように呻きながら身じろぐと、すぐ横から温もりが伝わってくる。
反射的に跳ねるように目を見開いて、飛び起きた。
「~~~~っ!? お、おい! なんでっ……!」
隣には、昨夜の張本人――トマーシュ。
上半身裸で、静かな寝息を立てている。
その顔はあまりにも穏やかで、無防備で、普段のクールさとは打って変わった無邪気さすら漂っていて。
「~~っ、なんでこんな顔して寝てんだよ、バカ……っ」
顔を真っ赤にしながらも、オデロはしばらく見つめてしまう。
でも、ふと我に返って、ハッと視線を逸らした。
「お、俺は別に……す、好きで……されたわけじゃ、ねぇし……っ!」
しかし、視線はまたトマーシュの寝顔へと戻る。
なんだか、心の奥がきゅっと締めつけられるような、だけどあったかい。
「……ちょっとは、気にしろよな。……責任とか……とれよな」
そうつぶやいたとき。
「……うん、ちゃんと取るよ。ぜんぶ、ぼくの責任だ」
「うわっ!? お、起きてたのかよっ!」
「ん……オデロがかわいすぎて、眠っていられなかった」
「なっ……! バ、バカかっ!? そういうこと、平気で言うな!! おまえは……おまえはさ……!」
バッと布団をかぶって顔を隠すオデロ。
でも、布団の中から聞こえる声は、震えていた。
「……きのうのこと……ほんとに、忘れたりしねぇよな?」
「忘れるわけないだろ。何回も、確かめ合ったじゃないか。……君のこと、もう絶対に離さないよ」
そっと布団の隙間から手を差し込んで、オデロの手を握る。
オデロはしばらく無言だったが、ぎゅっと握り返してくる。
「……うるせぇ。ほんと、調子狂う……」
トマーシュは微笑みながら、そっとオデロの額にキスを落とした。
「調子、狂わせてばっかでごめんね。……でも、君のこと、もっともっと狂わせたい」
「~~~~~~~っ!!! うるせぇって言ってんだろっ!!! バカ!!!」
オデロの拳がトマーシュの胸をぽかぽか叩く。
でも、痛くない。
むしろ――あまりにもやわらかくて、あたたかくて、甘い朝だった。畳む